故郷の廃家
甘口、辛口の雑記ブログ。 少女時代の思い出と、現代の風潮への怒りとの、2つの ベクトル上で行き暮れる。 団塊嫌いの団塊による、すべての世代の人へのメッセージ。


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2009.09.05  「思い出の夏 その四」  『最初の朝』 <<13:35


朝、いい煙の香りで眼を覚ました。
寝間の襖はしまっていたが、僅かな隙間からでも、父がかまどで燃やす焚き木の匂いが
漂い漏れてきていたのである。
針葉樹の燃えるいい匂い。
それに、ご飯の炊ける甘い香りも重なっている。

昨夜は母屋で、父や叔母。大きい従兄とそのお嫁さん、二人の間の赤ちゃん、
そして住みこみのインターン生の人などと一緒に、賑やかで、山の幸いっぱいの
食事をお腹いっぱい ごちそうになった。
それでも、ご飯を薪で炊く匂いは最高である。

「おお、起きたか。まずまあ、顔を洗っておいで。」
父がかまどから振り返って言った。

洗面は、母屋の横を流れる小川の水でする。
この小川の水は、山のどこかからか湧き出でて、高原の間を縫ってここまで流れて来る。
水は飽くまでも澄み切って、手を入れると飛び上がりそうになるくらい冷たかった。
小川の向こうは杉木立になっていて、そのさらに向こうは小学校の校庭。
杉木立の間から、朝日が差し込んで、川底の小石や砂をきらきら
輝かせている。
朝早いミンミンゼミやつくつく法師が、頭上の杉木立の中で
うるさいほどにもう鳴き交わしている。
それはもう、蝉の大合唱、と言ってもよかった。
叔母が母屋の台所から朝の食器を持って出てきて、冷たい小川の水に浸けた。
こうしておけば、川がいつの間にか、綺麗にしてくれるのである。
「よう眠れたな?」
「はい。」
「後で、高原の方に連れて行ってもらいなあ。美しい花が今頃はたくさん咲いとるから。」
叔母は笑顔でそう言ってまた母屋に入っていった。
どこからか、犬のコロがのっそりとまた現われて、私の横で水を飲んだ。

「コロ。おいで。」
そう言うと、私の後になり先になりしてついてくる。
コロは、本当は母屋の犬なのだが、農家であって美容院もやっている母屋の人々は
大抵忙しく、犬にかまってなどいられない。コロはよく、静かで優しい父の作業場で
一日を過ごすことが多いのだった。
私とは、昨夜のうちに仲良くなっていた。
父の家まで来ると、勝手知ったもののように、私の先に立って、
暗い土間の中に入って行く。

朝食の支度はほぼできていた。
父が釜の蓋を開けると、ご飯の白い湯気と甘い香りがたちのぼる。
お腹がくうーっと鳴った。
ふんわりと米粒が一粒一粒立ち上がった、釜で炊いたごはん。
そして、父が作ったみそ汁と卵焼き・・・。
ええっ!味噌汁にキュウリが入っている?
私は驚いたが、父は平気な顔で味噌汁を啜っている。
私は、ふと、母の顔を思い出し、涙が一粒、お椀の中にこぼれそうになった。

母は味噌汁にキュウリなど入れない。
柔らかく似たそれは、まずいものではなかったが、やはり私には奇妙だった。
いつも父は、こんな風に一人、かまどでご飯を炊いて、
キュウリなどの入ったみそ汁を作って食べているのだろうか。
そうして、母も今頃、私のことなど心配しながら、一人で食卓に向かっているだろうか。

どうして、父と母は一緒に暮せないのだろう・・・・・。

昨夜、生まれて初めて、父と二人で過ごす夜。
枕元の行燈形のスタンドの薄明かりの中、
私は母のことをどう思うか、父に聞いてみた。
常は優しい母は、いつも、父のこととなると、神経質になり、
父が、農作業より釣りをしたり本を読んだり、尺八の練習をしたり、ということなどの方が
好きで、家にいるより、この、妹の家にいることが多かったこと。
そこには気の強い姑までがやってきていて、母は一人家に残され、
幼い子供達と、若い頃、籾がらが目に入って失明してしまった舅と、
東京の士官学校に入ったが結核を得て、今は離れで養生する義弟と
それらすべてを抱え、広い田畑の農作業もほとんど一人で必死になってやったことなど、
生活力のない父のことは悪くいってばかりだったからである。

「そうじゃの。」父は私の質問に答えていった。
「若い頃は,そりゃあ、色が白くて綺麗だった。
髪の毛が真っ黒で、重いほどに豊かで多くての。」

父の口からは一言も母の悪口は出なかった。
それはその後もずっとそうであった。
それなのに……。



朝食後は、私の長姉の娘で、私にとっては姪にあたる子たちが2人で遊びに来るはずだった。
長姉は、父や叔母の家からさらに奥に、歩いてまるまる30分もかかるところに、
嫁に行って住んでいた。
そこから2人は私に会いにやってくる。
姪と言っても、私より、一ヶ月ほど先に生まれた子と、私より3つ年下の子たちである。
遊び相手としてこれほどいい相手はなかった。

さあ、父の家での最初の一日が始まる! 私の夏休みだ!
これからおよそ5日ほど。
父と思い切り二人で過ごせるのだ!

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Re: ららさんへ


こんばんは。

ららさんは本当に、私の文章の行間を読み取ってくださる・…

何のドラマもなければ、さして変わった話でもない、ただの私的な思い出。
その中から、こんなに深く、私と父、母の愛憎と悲しみを読みとって
くださるのは、それは、ららさんの想像力の豊かさもさることながら、
ららさんと私と、何か「たましい」の似ているところがあるからかも
知れないと思いました。

だから私はららさんの写真や文に強くひきつけられるのだろうと思う。
そしてまた、ららさんが私の思い出話にも、原発の話にも
いつも、真実の言葉で答えてくださるのは、私の「本気」を、
直球で心に受け止めてくださるからだろうと思う。
それでなければ、こんなにわかってくださることはできないと思います。

おっしゃる通り、私が一番父に似ていると、思います。
血液型もただひとり私だけが父と同じRhマイナス。
自然の中にいる時が一番幸せなこと。
そして、気が弱く隠遁癖があるところまで。

> この離れのお父さんが生活していたこの場所・・・その建物
> ダリアの花・・・
> この時の数十年後には誰もすむ人がいなくなって
> それでもやっぱりダリアが咲いていて
> その空き家になった建物をふと考えてしまいました。
> ・・・・
> この離れの建物は「故郷の廃家」の原風景のような気がして・・

もう、おっしゃる通りなんです。
ブログタイトルは、ここからとりました。
建物そのものも廃屋になってしまったんだけど、
ある「家」が、ある「家族」が解体していくさまを、心に想っていたから。
だから、この記事を、「故郷の廃家」の締めの記事にしました。
もうこれは、ブログを始めた時から、意図せず心の奥底で
決めていたような気もします。

>きゅうりの味噌汁といつもの味噌汁の違いは
> お父さんとお母さんの埋められない距離。

ああ、ららさん!・・・・・・
もう、私、なんだか涙ぐんでしまいます。

そうなのね。自分でも気づかずに書いたことを、
ららさん、どうしてこんなに明瞭にわかってくれるの?
そうだったんだと思います。
母は、いつも前を向いていました。
父は、きっと過去に生きた人だったんだと思う。
母は貧しくとも、プライドが高く、理想を持っていたけど、
父は、「欲」というもののあまり強くない人でした。

不思議なのは、ららさんの、この記事へのコメントを読ませていただいていると、
父や母のことで忘れていたことを、なぜか思い出すんです。
忘れていた感情を思い出す。
それがとっても、今の私の、記事を書く心を後押ししてくれていると思います。、
私の一家を知るはずもないひとに、書いている当の本人が触発されるって
どういうことなのでしょう。
きっと、ららさんが、人の心の本質を見据えていられるからだろうと思う。
「たましい」の原型を、しっかり捉えていらっしゃるからだろうと思う。

> お父さんからもお母さんからも愛されて、
> お父さんもお母さんも愛しているのに、
> たくさんの葛藤を抱えなければならなかった・・・
> その想いは長く重たく続いたでしょうね

小さい頃は、なぜ?なぜ?と思っていました。
父を想うことさえ許してもらえないなんて。
でも、母を絶対に裏切れなかったし。

けれども、とっても幸せだったと思っています。
その父、母への感謝の気持ちを、このブログの中に結晶させるよう、
もう少し、頑張って、記事仕上げたいと思います。

ありがとう。
嬉しい。

コロ。可愛いでしょう。これは黒ラブラドールを見て描いたんだけど、
実際のコロは、雑種の、大きな、耳の垂れた、顔は黒に一部茶の入った、
おとなしい犬でした。大体こんな感じ。
コロ。動物といえど、「たましい」を感じる犬でした。
ルルちゃんのように。
2009.09.05(23:41) / URL / 沈丁花さん / [ Edit ]



こんばんは。
沈丁花さんのお話しを読むとなぜか不思議に
私の想像力がどんどん先に走ってしまうのです。

ご兄弟の中で沈丁花さんが一番お父さんと一番似ているみたい。
この離れのお父さんが生活していたこの場所・・・その建物
ダリアの花・・・
この時の数十年後には誰もすむ人がいなくなって
それでもやっぱりダリアが咲いていて
その空き家になった建物をふと考えてしまいました。
・・・・
この離れの建物は「故郷の廃屋」の原風景のような気がして・・

きゅうりの味噌汁といつもの味噌汁の違いは
お父さんとお母さんの埋められない距離。
お父さんからもお母さんからも愛されて、
お父さんもお母さんも愛しているのに、
たくさんの葛藤を抱えなければならなかった・・・
その想いは長く重たく続いたでしょうね

この絵のコロちゃんとても可愛いです。
2009.09.05(22:45) / URL / らら / [ Edit ]


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PSP ?Τ?Ĥ?4

1980???о?5Ĥ??δ??3Ĥγ???Υ?????  [続きを読む] ?άθ 2009/09/06/Sun 11:43
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